『Dear My Abyss』感想

ストーリー

ある日、平凡な女子高生・朝戸昴のもとに差出人不明の荷物が届く。
荷物の中には、表題のない本が一冊収められており、同封された手紙には
「その本は、切り刻むことも燃やすことも出来ない」と記されていた。
昴は二人の友達を誘い、本を燃やそうと火をつける。
だが、手紙の内容とは相違し、燃え尽きる本。
興ざめした昴と友人二人は、各々の家に帰り、就寝する。
翌日、昴が目を覚ますと、枕元には燃やしたはずのあの本が置かれていた。
気味の悪さを感じたが、友人のイタズラに違いないと昴は結論を出し、本を机にしまいこんだ。
その日以降。昴とその友人たちの周りで不思議なことが起こり始まる。
学校の屋上に現れた、闇のもやを操る黄色いぼろぼろの服を着た不審者。
本を探しているという、九頭ルウという転校生。
夢の中で、あなたの願いを叶えましょうと問いかける声。
優しかった先生が、まるで人が変わったように生徒を叱りはじめる。
それら全ての共通点は、あの日燃やした本をさがしているということ。
………破滅の書を手にした少女たちを待ち受けるのは混沌なる世界の幕開けか、虚偽たる安寧への導きか。それとも、裏切りの結末か。

感想

キャラクターは影絵のシルエット(たまにキャラグラフィックが出てくる)。背景は写真加工でオーソドックスなサウンドノベル風の作りとなっている。同人作品のためかゲームとして見ると演出面が弱いのが気になった。BGMやSEは存在感が薄く、緩急ないから展開の遅い序盤はとにかく眠かった。というか何度も寝落ちした。また、最後のエンディングを迎えるとスタッフロールは存在せずそのままタイトル画面に飛ばされたせいもあり『Dear My Abyss』の物語にピリオド打てたのか判別出来ず当初はモヤモヤした。なまじ本編中に提示された様々な謎が宙ぶらりんだっただけにね。

上の文章だけ見ると『Dear My Abyss』は微妙だったの?と思われそうだけど、その逆でプレイして良かった。

本作は二部構成になっており、最初は快活な女子高生・新倉 魅栖華視点で物語が進行。こちらは表題のない本「ルルイエ・テクスト」を中心に巻き起こる事件や謎に迫る。「ルルイエ・テクスト」でピンと来る人は来るかも知れないけれど『Dear My Abyss』はクトゥルフ神話が設定にガッツリ絡んでおり、造詣が深い人は胸踊らせるかも知れないがそこらへんサッパリな身だから設定を理解しきれずそのせいで寝落ちしちゃったんだろうなぁ。オカルト知識豊富な不良・蓮田 風美と一緒に事件解決に挑む、魅栖華の姿は正統派主人公に見えるが『Dear My Abyss』の真骨頂は朝戸 昴にある。

魅栖華視点のシナリオが終わると昴視点がスタート。こちらも「ルルイエ・テクスト」絡みの事件に巻き込まれる流れは変わらずだが、昴の陰鬱な心理描写や転校生・九頭ルウとの交流がメインとなっている。本作のライターさんは文章に対するこだわりが強いのか言葉選びが非常に上手くて読みやすい。特に昴の家族を憎み、友達や妬むドロドロした内面は読んでるこちらも闇に引きずり込まれる程でページ送りをするボタンが止まらなかった。また、ルウとの触れ合いは人と向き合う事に臆病ながらも温もりを求めてしまう繊細な描写が秀逸。ページ送りするボタンが更に加速!友情と呼ぶには扇情的だから百合の方が近いかな。クトゥルフ神話絡みのオカルトや事件は明確に説明せず、エクストラで情報を小出しで「察してくれ」の態度な反面、昴関連はガッツリ描いてるあたり『Dear My Abyss』でやりたかったのはこっちだったのかなーとちょっと考えてしまう。

クトゥルフ神話を題材にしたホラーノベルと思いきや百合ノベルだった。予想外の内容でしたが文章や心理描写が非常に繊密で良いモノ読ませて頂きました。

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